Book & コラム

 
━━━マネジメントの仕組みを創る・磨く

  •    2021年7月15日発行  ISBN978-4-286-22324-7
  •    編集者:三小田睦(M3経営研究会)
  •    発行所:株式会社文芸社 
 
 

━━━企業を蝕む「熱意なき職場」

  •   (2018年1月29日の日本経済新聞の「経営の視点」掲載記事)
 
米調査会社のギャラップが仕事への熱意(エンゲージメント)を調べるために実施しているアンケートの一部が掲載されていた。
調査内容は、次に質問に「はい」「いいえ」で答えてほしい。
①私は仕事をする上で、自分の最も得意なことを行う機会が毎日ある。
②職場で自分の意見が考慮されていると感じる
③最近 1週間で自分の仕事が褒められたり、認められたりしたことがある。
④職場に親友がいる
⑤過去 1年間の間に仕事を通じて学び、成長する機会を持った。
 
アンケート結果、「はい」が多い人や職場ほどモチベーションが高く、仕事に主体的に取り組んでいる。逆に 5つ全て「いいえ」の人は、転職を考えた方がいいかもしれない。
こうした働く人のエンゲージメント調査は米欧で盛んだ。結果を見ると、実は日本人の仕事に対する熱意はほぼすべての調査で最下位クラス。ギャラップ調査では「仕事に主体的に取り組む人」は全体の 6%にとどまり、世界 139カ国のなかで 132位だった。米 IBMが昨年発表した同種の調査でも、 43カ国中 42位で、日本より劣るのはハンガリーだけだった。
かと思えば、近畿大学の松山一紀教授の調査では、会社員 1千人のうち「この会社でずっと働き続けたい」という積極的な終身雇用派が 25%だったのに対し、「変わりたいと思うことがあるが、このまま続けることになるだろう」という消極派(イヤイヤ派)が 40%とそれを上回った。
松山教授によると、消極派が多いのは今に始まった話ではなく、「高度成長時代にもイヤイヤ派が 2割を超えていた」という。会社に不満はあるが、かといって転職するまでの踏ん切りはなく、そこに滞留する。低エンゲージメント・ワーカーの典型といえる。
 こうした調査結果は企業経営にとっても重大な警鐘といえるだろう。米国企業は一般に意識調査に熱心だ。社員の不満が高まれば、優秀な人から順に会社を辞めて、大きな損失につながるからだ。
一方、日本は労働市場の流動性が低く、社員の離職率は高くない。だから経営者は働き手の心のありように鈍感だが、社員が会社を辞めないことと、彼らが活き活きと仕事をしているかは別問題だ。日本人は受動的なまじめさはあっても、自ら積極的に仕事に向き合う姿勢に欠け、それが労働生産性の低さやイノベーション不足に帰結しているのではないか。
 処方箋はある。社員の意欲を最も左右するのは直属の上司と部下の関係だ。部下とよく話し、彼らの「弱み」ではなく、「強み」に着目する上司がいれば、職場の意欲は目に見えて上がる。
マネジャーに適切な人を選び、彼らの技量を高める努力が企業には欠かせない。
 こうした取り組みは地味で、すぐ効果が上がるというものではない。だが、さぼれば(経営者が無関心のままでは)確実に組織の活力は減退し、業績にも悪影響が及ぶだろう。不摂生や運動不足を続ければ、何時か重篤な生活習慣病に蝕まれる。それに少し似ている。
 
〈読後の感想〉
 企業を継続し成長させるには、売上・利益の向上、品質・生産性の改善などに取り組み、この実現のため事業計画を策定し、部門毎の年度目標を掲げて活動を行っている。しかし、その企業で働く人達が主体的に仕事に取り組み、活き活きと働くことができる環境になっているかが目標達成の鍵となる。職場環境が、社員の力量及び人間性を高め、モチベーションを向上させる仕組みになっているか。
企業は人中心といわれるが、社員が如何に意欲的に働き、上司や周りとコミュニケーションをとり、活躍できるかにかかっている。
経営者と管理者は、社員に「期待」し、働く仲間と「共有」し、やりがいを実感するための「機会」を与えことができているか。この努力を毎日積み重ねていくことにより、社員の「使命感、主体性、知性」が磨かれ、その成果が企業の成長につながると思われる。
(M.M)
 
 
 
 
━━━中小企業の人手不足を考える 
 
「ちょっと、お時間宜しいでしょうか。」めったに声を掛けてこない社員からの、突然のこの一言に何度もドキっとさせられてきた。勝手な想像ではあるが、中小企業の社長の多くの方がこの言葉を聞くと、「来たか!」と思うのではないだろうか。気持ちを整えて「どんなお話でしょうか」と聞くと、結婚などのおめでたい話題であることもあるのだが、高い確率で「会社を辞めようと思います」と、退職願を持ち出されることが多い。中小企業の人手不足が言われて久しく、募集・採用の困難さを訴える声を聞くことは多いが、ここでは、中小企業製造業を念頭に、退職者(率)を減らす角度から人手不足の解決の糸口を見いだすことを試みたい。
 
◆勤務年数から見えること
 
15年間に入社した者の 73.2%が退職
筆者が経営する中小企業(以下、当社記載)は社員 40+パート 5名、総勢 45名である。社内にある記録では、 20011月から 20199月末の間に 65名が入社し、 20199月末現在の在籍数は 23名である。退職者数は 42名のため、 64.6%が退職していることになる。ここから、入社歴 3年以内の者を外し、対象を 2001年から 15年間に入社した者に絞ると、分母が 56名となり、その内 41名が退職していることから、退社率は 73.2%となる。この期間でみると、凡 4人中に 1人が残っている計算となる。
この数字は、以前より感じている 20年以上のベテランと言われる社員として残るのは、 6人に 1人という経験的な感覚とも大きな誤差はない。そして、 201610月から 20199月までの 3年以内に入社した 9名の内の退職者は 1名である。このあたりでは、 3年以内に半数は退社するといった間隔との間にズレが生じている。
過去の退社者の平均勤務期間は4年であった。また、退社した 42名から定年を超えていた 2名を差し引いた 40名の内、3年以内勤務で退職した人数は、ちょうど 50%20名である。これらのことから、 3年以内の退社率を抑えることができると、定着率を上げることになるのではないかと想像することができる。
 
52年間、現役で働く時代
吉川徹大阪大学教授(日本経済新聞平成 301219日)の記事を以下に紹介する
通勤電車の中で、ショッピングモールで、都会の交差点で……。日ごろ見かける人々を思い浮かべてみて下さい。その中に大学を出ている人がどの程度いるかご存じでしょうか。ここではひとまず成人式から還暦まで、生年でいえば 1950年代後半から 90年代後半に生まれた人を考えることにしましょう。今後の日本社会を実質的に支えていく現役世代の人たちです。答えは、四大卒以上に限れば約 34%、短大・高専卒を含めた高等教育修了者全体をみても約 46%で、半数には至りません。ちなみに大学を出ていない人(非大卒層)の内訳は、中卒が約 4%、高卒が約 36%、専門学校卒が約 15%で合計すると約 54%となります。
 
同記事によると、 2018年以降も四大卒以上の卒業割合は半数を大きく超えることはない。仮に、大企業に四大卒以上の方が多く、そして、就業者全体の 70%が中小企業に勤めている事実を含めて考えると、中小企業勤務者の半数以上の者は二十歳までに学歴を終えている。 18歳で社会に出るとすると、彼らは 70歳の迄 52年間もの間、勤労者として社会から期待される可能性が高い。
ここで、当社で経験している退社者の平均在籍年数 4年が人生を通じて繰り返されると仮定すると、 52年間で 13の職場を経験することになる。しかし、実際に当社の現在勤務者(定年後の雇用延長を除く)の平均就業年数は、約 13年である。この数字が一般的である保証はないが、仮に 52年の間に 13年の就業を繰り返すとすると、 52年間では、ちょうど 4ヶ所の職場を経験することになる。また、この平均就業年数の 13年を超えて勤務している者の平均年数は 20年を超えている。これに、定年後も雇用延長をしている者の在籍年数を加えると、より長い期間同じ会社に勤める人も相当数いると思われる。
以上の状況から、中小企業の現場では就業者の流動性は高いものの、同時に長く勤務している者も少なくないことが見えてくる。このように、勤務期間からの状況をみても、実際には様々な働き方が混在していて、単純に平均で語ることはできない。
 
◆中小企業白書のデータから見えること
 
2005年度版の中小企業白書(以下、白書と記載)では、「 中小企業・小規模事業者における人材の確保」を大きなテーマとして取り上げている。これらのデータを基に現実的な考察に繋げたい。
 
採用担当者は社長
まず、人材確保の為の社内担当であるが、大企業のような部署がある訳ではない、また、本業の収益部門ではない部署に人を割く余裕がないこと中小企業の現実である。当社でも採用を専門にする担当者はいない。実際には、社長が主に担当しているのが現状である。
白書によると、中小企業・小規模事業 者における採用担当者は、「経営者」と回答した企業が73.3%と高く、多くの中小企業・小規模事業者の人材採用において経営者 が自ら携わり、企業にとってふさわしい人材の採用を心掛けていることが分かる。 小規模事業者においては、「経営者」の割合が高くなる( 80.4%)とともに、「特段の担当者はきめていない」が多い傾向にあり、人材採用は必ずしも組織的に行われていないのが実情である。人材採用に関して、中小企業のノウハウ不足は否定できない。
 
中小企業の離職率は高い
採用した者が、定着してくれるか否かは経営にも大きく影響する。白書271頁のグラフをみると、過去 12年間に大企業・中小企業ともに離職率はやや減少傾向にあるものの、常に中小企業の離職率は大企業を上回っている。グラフの最終年である2012年の中小企業の離職率は12.3%となっているが、 2001年の離職率は 16.2%である。また、その前後3年間は 15%を超えていることから、 3年で凡半分の社員が退社していると言える。このことは、やはり、3年で半数が退社してきた当社の過去の実態とも合致する数字である。
 

第2-2-26図 中小企業白書 2015 271頁 
そして白書では続いて以下の記載がされている。
 
第2-2-27図はアンケート調査結果により、中小企業・小規模事業者の離職率を見たものであるが、採用後3年間の離職率は中途採用では約3割であるが、新卒採用の入社後3年間の離職率では4割を超えており、実に半数近くが3年間で離職している実態が分かった。企業規模別に見ると、中途採用の離職率は規模別の違いは僅かであ るが、新卒においては、小規模事業者が中規模企業を大きく上回り、実に新卒者の5割超が3年以内に離職している。このような状況に鑑みれば、中小企業・小規模事業 者が限られた経営資源を費やして確保した将来を担う人材を、職場に安定的に定着させることは喫緊の課題である。
 
ここでの数字は、当社の過去の実態が特殊ではないことを物語っている。そして、白書が言うように、多くの中小企業にとって「人材を職場に安定的に定着させること」は大きな課題である。これからの人材確保は、採用活動だけに偏らず定着を課題にした活動も必須である。
データから、大企業との離職率の差が 2012年の数字では 1.2%である。ここでは、一見、離職率をみると大差がないように見えるが、実際には入社 3年以内に半数近くの者が退社する状況から、戦力になる前の育成段階で多くの者に退社されてしまうことが、中小企業の苦悩の1つなのである。
 
 

第2-2-27図 中小企業白書 2015 272頁 
 
退職理由は人間関係
白書では、離職率に続けて仕事を辞めた理由についてのデータを紹介している。
 
離職した人の離職理由を聞いたものが 第2-2-31図であるが、「人間関係上司・経営者への不満」が最も高い割合となって いる。次いで、「事業内容への不満」や「給与への不満」がそれぞれ約1割となって いる。離職時期別の違いを見ると、「人間関係上司・経営者への不満」が就職後3年以内において顕著に高く、一方で3就職後 年以降においては、「会社の経営方針・ 経営状況が変化した」や「キャリアアップのため」が相対的に高い傾向にあることが 見て取れる。
 
 

第2-2-31図 中小企業白書 2015 276頁
 
仕事を辞めた理由のトップが、人間関係に関することである。「やはり」というところが、正直な感想である。また、業務内容への不満、会社の方針変更など、給与や残業時間といった定量化可能な項目に比べ、定性的な項目の合計が 50%を超える。人間関係で中小企業が不利である部分は配置転換により物理的に離れた職場を用意することが難しい点である。実際に、人間関係や会社の方針等を理由に職場を辞める決心をしてしまった者を引き止めることは困難である。現場では、そのような状況にならないように仕組みや環境を整備すること、また、普段からのコミュニケーション(ヒアリング)を心掛けることなどが大切になってくる。
続けて白書では、就業者側から見た人材定着に関する有効な取り組みに関して述べている。内容としては、「賃金の向上」より「興味にあった仕事・責任のある仕事の割当」「資格取得の支援」「休暇制度の徹底」 「子育て支援」など、自己の成長ややりがいに繋がる項目とライフワークバランスに比重があることが特徴となっている。
 
 
◆生の声(社内での座談会)
 
人材定着に関する有効な取り組みへのヒントを得ることを目的として、当社内において、 20歳未満で入社した者と座談会を開くこととした。現在( 20199月)、当社には 20歳未満で入社した者が 8名おり、専門学校等の新卒( 2021歳)で入社した5名を加えると、若年入社の者は 13名になる。前記 8名の平均年齢は 40.3才で、比較的分散しており 40歳以上に 4名、 40歳以下に 4名となっている。この 8名の平均勤務年数は 20年を超えている。この中から年齢が比較的分散する 5名の社員に集まってもらい、座談会を行った。参加者には、各自の入社のきっかけ、辞めたいと思ったことがあれば、そのときのこと、そして学校時代の同級生と比較して、現時点で思うことなどを、自由に語ってもらうこととした。
 
 
S亨  56歳 青森県出身
高校を卒業したとき、本当は大学に行きたかったんです。でも、お金が無かったので諦めました。当時は奨学金をもらうにしても、成績条件のハードルが高くて自分には無理でした。しかし、家を出たい気持ちは強かったです。そこで、東京に出て就職しようという気持ちになり、結果的に親戚が紹介してくれたこの会社に入りました。実は、ここはその親戚の方が勤めていた会社の取引先なのですが、「自分が務めている会社より、こっちの方が良いと思うよ」と、いわれて入社しました。当時は、紹介で決まると面接もろくになかったですね。
そうして入社してみたら、毎日が忙し過ぎで、やることがいつも目の前に溜まっていて、目が回るような日々でした。そんな訳で、イヤだとか、辞めようかなどと、そんな事は考える暇もなかったという感じです。その後、正直に言うと、転職を考えたこともありましたが、条件が合わなかったりしたこともあり、その時は流れてしまいました。実際に、他の会社も知らないし、転職しても、そこが合わないリスクもあるので、その後は転職を考えなくなりました。今となっては、ずるずるしてしまった結果、ここにいるといった感じです。
田舎の同級生とは、今はほとんど付き合っていないので、比較と言われてもよく分からないです。でも、上京した最初のころは、給料もやりがいも同級生より上だったと思います。バブルが弾けた後くらいから、徐々に下がってきた感覚はあるけど、その後は、他の会社の友人と比較していないので、今はよくわからないです。でも、自分的には最悪ではないです。
しかし、バブルのころは凄かった。あのころは、とても忙しかったし、給料も上がったし、お金も使った。そして、自分も若かったです。毎日、残業の後に仲間がいる決まった店に必ず顔を出して、深夜まで飲んだものです。
 
K博昭  49歳 東京都出身
仕事が続かない人を見ていて感じることがあるので、話の順番が違うとは思いますが、そんな話からでも良いでしょうか。自分と彼らとの違いを考えてみると、単純に考えて体育会系とそうでないやつなのでは、と思うのです。小さい頃からの体験も影響しているのではないかと感じます。小さい頃、先輩後輩の中で揉まれていると、多少理不尽なことを言われることが多いのですが、そういうことに慣れてくるので、結果的に上手く切り替えしていける技を身に付けていると思うのです。そうでない人は、ちょっと言われただけでも「きつい」とぼやくとか、直ぐに「泣いてしまう」という人が多いと聞きます。実際に、この会社でもそうだったと思うのです。
長く残っている人は、実際には体育会クラブ活動の経験がないにしても、その背景が「揉まれてきている」ということなのではないかな、と思うのです。どういうところで揉まれてきているのかなと思うと、やはり、これまでの先輩後輩の中での人間関係なのかなと思うんですね。
昨日、たまたま家族と話をしていて、感じたことなのですが、私の妻は、転職派なんです。行くところ、行くところで「いやな人がいる」と言って転職しています。ところが、息子は違うようなのです。学生アルバイトをしているのですが、1ヶ所で長続きしているのです。「職場にいやな人はいないの?」と聞くと、「いるけど、そんなの関係ないよ!」と、いう感じなんです。何か言われても「変な人だなと思って、す~っとかわしてしまえばいいので気にしない」と、言うので、オレと性格似てるなぁ、と思っていたところです。実は、妻は高学歴で部活もしていないし、先輩後輩の中で揉まれた経験のない人です。そんな妻が長続きしないのを見ていて、自分の考えていた理屈が身近でもあてはまる感じがします。
同級生と人生を比較してみてとのことですが、二極化を感じています。受験成功組と失敗組に分けてみると、 20%程の人が成功組に感じるのですが、その多くの人は大企業に勤めています。自分は、残りの 80%の中くらいにいるように感じます。ところが、高学歴の妻に言わせると「あなた、私たちはそんなに裕福じゃないわよ」と、言われることがあるのです。妻には大企業の友人が多いので、感覚が少し違うような気がします。
あと、私は入社した時の上司に恵まれたな、と感じてます。本当に手取り足取り親身に指導してくれました。それと、小さな会社は経営者が近いことが大きな特徴だと思います。特にうちの場合はそう思います。社長も若かったし、一緒に遊ぶことも多かったので、自分と相性がよいことが分かり易かったです。
実際には、辞めたい時もありました。 5年目、 10年目、 15年目など、節目節目で辞めたいと思いましたが、そのタイミングに何かがあるんです。結婚したり、移動で上司が変わったり、子供ができたり、なぜか何かがあるのです。そして、異動した時の上司にも恵まれました。結局、続けてこれた理由は上司に恵まれたからかも知れません。
 
K昌宏  35才 茨城県出身
年明けに 36才。生まれて高卒まで 18年、就職して今日まで 18年です。高校卒業時に上の学校に行く気持ちはなかったので、就職とは思っていたのですが、仕事としては特別やりたいことがないままでした。ただ、働かなきゃとは思っていたけれど、実際には仕事先が見つからないままふらふらしていたら、親戚から誘われてこの会社に来ました。実は、伯母が当時の相談役と友人でした。友人を誘っても良いというので、幼なじみの U君を誘って2人で入社しました。就職しないまま遊んでいる訳にもいかないし、好きな趣味もあったので、その為にお金も稼がなきゃと思っていたのを覚えています。正直、地元にはいたくなかったので、良かったです。
最初は何も知らないので、覚えることが楽しくて、夢中なまま1、2年が過ぎました。ある日、自分ではまあまあかなと思ったプリントを出した時、営業部の先輩に「もっと、魂を込めて製品を作れ」と言われと時があったのです。その時、なにくそと思ったので、「よそはどうなんですか」と聞いたら、「よそはもっと奇麗だ」と、言われてしまい、とても悔しかったことを覚えています。その時、初めて同業他社の仕事を気にしました。
辞めたいと思うタイミングはありましたね。気がついたら、一緒に入社した U君に先に辞められてしまいました。結局残ってしまい、ここしか知らないのですが、暫くしたら、ここしか知らないことを逆に強みにして、自信を持ってやっていけたらなと思うようになりました。
去年の工場長の突然の退職も大きかったです。余計、辞められない感じになっちゃいました。今は、人との繋がりを大事にしたいなと思っています。相談役(当時)がいて誘ってもらえて、社長に受けてもらって、先輩にいろいろ教えてもらって、社内外にその人たちがいるから頑張ろうって思いますね。そういう人たちの為にも良い仕事をしたいと思います。
うまく言えませんが、繋がりといえば良いのでしょうか・・・今は、ここにいる後輩達も頑張っているので、彼らの為にという思いもあります。特別な感じでやってきた訳ではないですが、先輩達がいて、相手(顧客)がいて、目の前には後輩がいてって感じですかね。退職してあからもたまに顔を出してくれる相談役も言ってました。「魂を込めろっ!」と。今は、繋げていきたいです。
 
 
G仁  28才 埼玉県出身
高校卒業時に、やりたい事が別になかったという意味では先輩と一緒です。仕方ないので、ハローワークの募集を見ていたら、高校の先生に「家から近いからいいんじゃないか。ここ行ってみたら」って言われて、来てみました。(先輩達と違って、ハローワーク経由です)最初の三年くらいは、その日その日で言われたことをやるしかなかったし、べつにいやな事もなかったので、辛いとか、辞めたいとか、そんなことを真剣に考えたことはなかったです。その後、少しづつ自分からやらなければならない立場になって、それが多少なりともやりがいになってきた感じでしょうかね。今は、また品質や効率で過去を上回りたい、という気持ちもあるので、辞めたいとかはないですね。
通勤中に、交通事故にあってしまったことも転機になりました。長く入院している間、職場の皆さんが待ってくれていたというか、迷惑もかけたので、恩返ししたい気持ちもあります。もうあれから 10年近くになるんですね。
後輩で辞めていった人もいますが、彼らを見ていると「何か違うな」って感じていました。責任感というか、考え方が根本的に違うなって感じてました。仕事する上では、責任感がないと、ちょっと怒られただけでもそれがいやな事になってしまって、結局辞めてしまうという風に見えます。どちらが良いよか悪いとかではないと思うのですが、自分とは違うな、と感じてました。例えば、僕も同じように怒られることがあったのですが、では、次にどの要な行動をしていくのか、辞めていった人達は自分とは違っていたな、と感じます。
高校時代の友人をみていて、上位 20%くらいの人たちは凄いなと思うことはありますが、「彼らみたいになりたいな」とは別に思わないです。仮にいい会社と言われている会社に入れたとしても、自分には合わないと思うんですね。自由に仕事ができない、自分の好きな様に動けないように見えるんです。入ったことないので、本当は分からないんですが、例えば、プリントの立ち会いにここに来られる大きな会社の担当者さんを見てると、そう感じます。窮屈な感じで、ストレスがかなり凄そうに見えるんです。給料はいいのかも知れませんがね。
高校で、普通くらいだった人たちの中では、自分はいい方だと思いますよ。今は、仕事でもプライベートでも何の不満もないので。むしろ、これからの方が、いろいろ悩むかも知れないですね。
最後に、先輩達とは逆で、僕は家の近くに勤めましたが、特にどこかに出て行こうとは思わないですね。現状に満足しているからかな。「自分のエリアはこの辺かな」っていう感じです。
 
 
N拓  21歳 埼玉県出身 
実は、高校で就職活動し始めた時、やりたい事が別にあったんです。以前、コンビニでバイトしていたことがあったんですけど、職場が自分には合わないな、と思っていたとき、スーパーにいた友人に誘われて、近くのスーパーの「かすみ」に替わりました。最初は品出し位の仕事しかなかったのですが、ある時、社員の方から担当していたアルコール売り場の発注業務をしてくれないかと言われて、発注業務をやり始めました。徐々に、本来なら社員がやる仕事を任されるようになって、楽しくなっていったんです。そうだったので、就職活動を考えた時には、真っ先に「かすみ」を考えて、受けました。ところが、落ちてしまったのです。それを機に、自分の中で何かがポッキリ折れてしまい「もう、やりたいことは何もないな」と思ったのです。
しかし、同時に「どうしよう」と焦る気持ちも出てきたんです。そんな時、親に「焦ることない。高校卒業して就職していなくても、まだまだ先は長いから焦るな」と言われ、少し気持ちを落ち着かせることができました。気が楽になって、近場で調べようと思ったら、ここが最初に出てきたんです。ちょっと見てみたいなと思ったので、工場見学に来ました。その後も 3社くらい見たんですが「ゼロから始めるならここかな」って思えたので、ここに応募しました。
最初、先ずは 3ヶ月見てみようと思って入ったのですが、その時は辞めようとは思いませんでした。そして、1年経った時に「このままでいいのかな」と、頭をよぎったのです。その時に、初めて同級生と比較してみました。そうしたら、大学に入っても授業に行っていないとか、就職しても長持ちしないで仕事を転々としたやつとかが周りにいて、その時「オレこいつらみたいになりたくないな」と思ったんです。そして、他に行く所もないし、とりあえずここで続けてみようかなって思いました。ところが、 2年目になった時は、上司の工場長がすごく嫌いで、あの人がいるなら、いずれ辞めたいと思ってました。慣れない仕事を頑張っても、けちょんけちょんに言われて、陰でも悪口をいわれていたので、正直、分からない人だなと思っていたのですが、同時にこれが社会なのかな、とも思ってました。
そして、こんなやつの下にいなきゃならないなら、とっとと辞めようと考えたときに、ちょっと待てよ、とも思ったんです。将来の自分のために、すぐには逃げないで1~2年は頑張ってみようって、自分の中でラインを決めたんです。そしたら、気持ちも楽になったんです。だから辞めなかったのですが、びっくりしたことに、去年、工場長が先にいなくなっちゃいました。その時、正直「やった!」と心の中で喜びました。
中学や高校の友人たちとの比較ですが、高い給料をもらっている友人を羨ましいと思うことはありません。例えば、今、スーパーで働いている友人がいて、給料はオレよりいいらしいのですが、帰りが終電になることが多くて、ブラックらしいんです。オレが、今、働いている会社こうだよって言うと「いいな」と言われます。でも、ここにいていいのかな、と思うこともあります。正解はないので、本当のことは分からないのですが、自分のためには、もう少し経験値を積んでもいいかな、と思います。そして、絶対にやつらの下にはならんぞと思いながら頑張ってます。
しかし、以前1人だけ、凄い収入で羨ましいなと思う友人がいました。でも、1年半で辞めちゃったんです。聞いたら「上司のいじめといやがらせに耐えられんかった」ということでした。彼は、今ローソンでバイトしてます。彼に、「おまえの職場をみてみたい」と言われることもありますが、就職先という意味では「友達の職場には行きたくない」とも言います。
あらためて、友人たちと比較をしたら、学歴とか収入では下の方かも知れませんが、この会社に働いていて良かったなと思う部分はあります。最初に言ったスーパーでバイトしてたときに、とてもいい上司がいたのですが、ここのKさんがその上司に似ていて、Kさんならついて行ってもいいかなって思っています。職場で怒られたら、辞めちゃう友人もいます。でも、怒られることはまだ見放されていないのだから、落ち着いて考えてみると悪いことではないなと思います。この工場では一番下だし、できない事も沢山あるけど、言ってくれることはありがたいなって思ってます。
 
座談会から浮かび上がること
参加者の話を聞いて、共通点を拾ってみると、やりたいことがなかった。という声が多い。中小企業の仕事の多くは高校生から見えないものであえる。たまたま、知人の紹介や就職活動でであったのであって、幼いことからの希望の職業であることは少ない。そして、現在まで仕事が続いている理由は、関わる仕事へのやりがいや責任感といった仕事へのモチベーションよりは、「上司に恵まれた」「Kさんならついて行ってもいいかな」「小さな会社は経営者が近い」「手取り足取り親身に指導してくれた」「見放されていない」など、人間関係にかかわる理由が多いことに気付かされる。彼らの言葉を簡単にまとめると以下のようになる。
 
 ・やりたいことが、特になかった
 ・たまたま身近にあったきっかけで応募した
 ・人(上司や仲間)に恵まれた
 ・やっているうちに本気になった
 ・辞めようと思った時もあった
 
また、相違点として、昭和生まれの社員からは、実家を離れるきっかけとしての職場(実家から通えない)選びという視点が多かったことに対して、平成生まれの社員からは「家から近く、通いやすかった」ことを今の職場を選んだ理由にしたとの声があった。そのうち、2名は実際に自転車で通っている。
 
◆世間の声、働き方改革
 
「働き方改革」という言葉を耳にする機会が増えている。厚生労働省ホームページ  https://www.mhlw.go.jp/content/000332869.pdf2019/10/21)によると、働き方改革関連法では、以下が重要なポイントと言われている。 
 
1、長時間労働の是正(時間外労働の上限規制・有給休暇の確実な取得) 
2、多様で柔軟な働き方の実現(フレックスタイム・高度プロフェッショナル制度) 
3、勤務時間インターバルの普及 
4、産業医・産業保健機能の強化 
5、不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金の推進)
 
また、巷の声としては、プレミアムフライデー、テレワーク、育児休暇などの導入も含めて「働き方改革」と一束に言われているのが実感である。中小企業製造業の現場では、プレミアムフライデーは定着しなかったものの、5日間の有給取得は義務化なのでインパクトが強い。但し、製造現場では、テレワークやフレックスタイムなどの導入は難しいのが現状である、と、いうより実際には無理である。
有給取得に関する1つの事例として、当社の取組を紹介すると、 20194月より、全ての社員に毎月計画的に半休を取得してもらうこととした。 1年間通すと 6日間の有休を取得したことになる。実際には、業務に支障がないように、部署毎に半休カレンダーを作成して頂き、各部署長に管理して頂いている。多くの社員の声として「部署内で相談しながら計画的に毎月 1回の半休程度なら、現場感覚で何とかなる」ということだった為、実行に踏む切ることができたのだが、実行してみると「幼稚園のお迎えに行ったら、子供が喜んでくれた」(男性社員)、「平日の午後に、美術館をゆっくり歩くことができた」(女性社員)という声を聞くことができたので、評判は良いようである。また、社員間に計画的な半休に対する協力意識ができたことから、心配していたような業務への支障感じることは少ない。
 
◆人が残る職場を目指して
 
中小企業製造業の職場では、テレワークは不可能であり、フレックスタイムも導入しにくいのが現実である。そんな職場にどのように定着してもらうのか、この小論文の課題である「退職者(率)を減らす角度から人手不足の解決の糸口を見いだす」ことへの回答として、2つの角度からの拙論を示したい。 1つ目は、入社 34年の退職者が減るように工夫すること。 2つ目は、 20年を超えて勤務する者が長い職業人生に納得することを目指すことである。    
 
拙論1:職場ではチーム作りを目指す(家族ではない)
実際に、製造業において 3年で退職されてしまうと、ほとんど育成期間で終わってしまい、会社への貢献度をカウントすることができない。そこで、入社 34年の退職者が「ここにい続けてもよいな」と思うようになるような工夫をすべきであり、その工夫ポイントは3年目の者が退職する時の理由にヒントがあるはずである。前記した退職理由は、上司との関係、業務内容、給与、労働時間、会社の方針、同僚との関係、キャリアアップの実現、である。この中で給与、労働時間、を除いて定性的な項目だけに絞っても、 50%を超える退職理由に対処することができる。そしてこの定性的な項目に絞って工夫をすることで、退職する平均年数を延ばすことを目標にしたい。
ここで取り組むべきなのは、何かを根本的に変えることではなく、今をしっかり理解してもらうことなのだと思う。具体的には、以下のことである。
 
・今の上司としての思いを語る、
・今の業務内容の意味を伝える、
・今の会社の方針を説明する、
・同僚との交流機会を作る、
・キャリアアップの道筋を示す、
 
筆者は、これら工夫や活動によって退職者の大半が思いとどまるとは考えない。しかし、誤解や理解不足から退職を考えている者がいるとしたら、かなり高い確率で退職を考えることを事前に防ぐことができるはずである。経営者や幹部の立場の方にとっては、少々仕事が増えることのように感じるかもしれない。しかし、新たな募集活動において多くの方に説明することや面接をすることに比べれば、身近な時間・範囲でできることである。
社員との関係性において、「社員は家族」と表現する経営者がいるが、筆者は共感することができない。この段階で目指すことは、価値観の一致や以心伝心ではない。むしろ、各々ばらばらの価値観やプライベートを持ちながら、この場(職場)において目標を共有する「強いチーム」作りを目指すべきであると考える。そのように考えれば、チームの監督やコーチが、思いを語り、チームの方針を説明し、戦術を理解してもらうように努めた上で、個別にスキルアップへの期待や道筋を示すことは当然である。そして、メンバー同士の交流機を促し、お互いの理解を深める機会を作ることもごく自然である。
事例として、当社の取組を紹介すると、入社直後に経営者が 1時間以上をかけて会社の理念を説明し、配属先の職場においても理念を繰り返して耳にする機会を作る。次に、入社1年弱のタイミングで、理念を具現化する為に取り組んでいることを座学形式( 2時間x 4回)で説明する。これが、業務内容の意味を伝えることに近い。そして、 2年目以降には一般社会での能力評価・キャリアアップとの整合性を担保するため、ビジネスキャリア検定・QC検定への受験取り組みを奨励している。加えて、部署横断的に同年代の社員同士でヒヤリハットミーティングを2ヶ月ペースで繰り返しながらお互いの理解を深める。それでも、好き嫌いに左右される人間関係をコントロールすることは不可能である。ただし、経営者や上司の人間性理解や、会社の方針への誤解を排除することに繋がることが重要と考える。この取り組みを進めた結果、前記したように、当社に 201610月から 20199月までの 3年以内に入社した 9名の内の退職者は 1名( 20199月末現在)である。
この事例結果は、たまたまである可能性は否定できず、再現性が怪しい部分もある。しかし、結果的に新入社員の半数が退職する平均年数を 5年、 6年と延ばすことができれば、多少なりとも育成期間を超えて貢献する社員が増えることとなり、また、その中からより長期間に亘る勤務者を生み出す可能性も見えてくる。
 
 
拙論2:職人の生き方を目指す
10年以上勤務をしている社員へのアプローチも、前記の拙論1のままでよいのであろうか。チームの一員となり、既に後輩を指導する立場にもなっているはずである。当社の 20199月時点で、平均勤務年数 13年を超えた社員だけで平均勤務年数を確認すると 22年である。彼らが実力を発揮し、活躍していることは中小企業製造業では生命線そのものである。
中小企業に出向くと、長年勤めている「職人的な人」に出会うことが多い。モノづくりに携わる人は勿論であるが、経理、営業、そして一般事務に至まで、一朝一夕ではなかなか得ることのできない能力を発揮している。筆者の周りでは、社内の悪筆を全て解読する経理担当、どんなクレーム中でもお客さまの信頼を失わない営業担当、部品のイメージを聞いただけで図面にするデザイナーなどが存在する。いずれも、形式知だけでは得られない。他者との係わりも含めて、経験の積み重ねをもって社会や組織で必要な力を発揮している達人たちである。彼ら全般が「職人」とは呼ばれる職業ではないが、「職人的な人たち」ではある。
 
永六輔は、著書「職人」に職人の言葉を紹介している。
 
「職業に貴賎はないというけれど,生き方には貴賎がありますねェ」
「モノもつくってきたけど、ヒトもつくってきたんだ」
「労働基準法というのは、修業中の弟子に月給を払えという。仕事を身につけてもらうんですから、
 払うどころかもらいたいくらいです」
 
現在の職場で、そのままの言葉で新入社員に接したらパワハラと言われかねない台詞もあるが、中小企業の製造業の感覚としては共感できる部分が大である。このせりふを語った職人達も、長い間には、去る者・残る者、いろいろな人生の選択を見てきたはずである。そして、結局、辛抱しながら職人という生き方を選んだ人なのであろう。
筆者には、永六輔が「そこには、職人という職業があるのではなく、職人という生き方があるのだ」と言っているように聞こえる。仕事と生き方が重なっていく時、職場のありかたも、その様な生き方を受け止める環境であることが望ましいのではないだろうか。長く同じ仕事を続けることで、腕を上げるとともに、人間を磨くことができるとすれば、そこは職場であると同時に、鍛練の場、強い言葉で言えば「人生の道場」ともいえるのではないだろうか。そういう意味では、中小企業の職場のあり方は、ある面において人生の道場なのである。
20年以上勤めた者に会社が提供すべきことは、前節で述べたチーム作りの為工夫ではなく、  その人にとっての成長の場である。中には、経営の中枢を担う者、部署の先頭に立つ者、部下を育成する者、得意な業務に専念する者、個々の活かし方は夫々かもしれない。互いの理解が深まった先にある、そのような状態の中では、価値観の一致や以心伝心ができているのかもしれない。そして、そこには、個人にとっての成長の場があるべきである。そこが「各自にとっての道場」になることを目指すのも、経営者の仕事の 1つかも知れない。
 
おわりに
2018 年度に倒産した企業の「平均寿命」は23.9年だそうです。会社の寿命は人間の平均寿命より短いから、売れる能力を磨いて、積極的に転職すべきだとの声を聞きます。しかし、我々は、倒産しない会社を目指しています。当社社員の平均勤務年数は 13年です。これが一般的と仮定すると、高卒から 70歳までの 52年間には平均 4つの職場を経験することになります。筆者はいたずらに終身雇用制の維持を支持するものではありません。適性を活かし、幸せな人生を目指す中で、職業や職場を変え易いこと、また、独立し易いことが望ましいとの前提で、拙論を述べています。その中で、 41人の割合で 20年以上勤めている事実もあります。
 社会に必要がなくなった会社がなくなっていくと考えれば、経営者が目指すべきは、社会に必要な状態であり続けることではないでしょうか。大きな生物が生き残るのではなく、変化に対応した生物が生き残るのであれば、小さなか会社が生き残る方法はあるはずです。しかし、同時にそれは簡単なことではないでしょう。そのためには、縁あって入社した社員を育成し、年長者になっても「成長」する姿勢を持ち続けることが自然である社風を作ることが必要と考えます。多くの中小企業製造業において、企業の存続と社員の幸福の両立が叶うことを願って書き進めて来た本拙論を、議論のたたき台の1つに加えて頂ければ、筆者にとっては、この上ない幸せなことです。
(I.T)